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安岡正篤著「禅と陽明学」を読んで

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安岡正篤著「禅と陽明学」

自分が禅宗ということもあり、禅にはずっと興味がありましたが、なかなか深く学ぶ機会がないなと思い、この本を手に取りました。

読後感は「参りました。」の一言に尽きます…。

安岡先生の著書はどの本も読む度に「参りました。」となりますが、この禅と陽明学は上下2巻、合計800ページ近くあり、浅学ゆえに未知の内容も多く、脳みそがオーバーヒートしっぱなしでした。

具体的な内容は、仏教のルーツであるヨーガ、古代インドの宗教や釈迦の大悟から始まり、仏教伝来時の中国の社会状況の解説。仏教と老荘の交流、仏教と儒学の交流、そして、仏教・老荘・儒教が合流して禅が発展したこと。

易の哲学や漢民族と日本民族の比較などしつつ、悠久なる中国の勃興史を駆け抜ける。シナに仏教が伝来した後漢から、三国時代、晋、乱世を経て、唐、宋にかけての思想、文化、偉人を丁寧に解説して、最後の最後に王陽明にたどり着きます。

いつ陽明学が出てくるのかと思いましたが(笑)、最後の「天地萬物一体論(聶文蔚に答える返書)」、「抜本塞源論(顧東橋に答うる書)」の2章は、王陽明先生と各人の手紙のやりとりのまとめですが、まるで現代社会の問題点を王陽明先生とともに憂い、考え、議論しているかのような臨場感で、心の底から熱くなるような想いでした。

毎度のことですが、偉大なる人物の歴史や逸話に触れる度に、自分の卑小さを実感し、反省することこの上なしです。本書の上巻にも「人は自ら省みることが重要である。」という部分が散見されます。
禅の本質の一つでもあります。

先日、近くの学習塾に「三省」という習字を掲げている子がいましたが、とても立派ですね^^;
恥ずかしいかな、自分が三省(論語・学而篇)という言葉を意識し出したのもここ数年です…。

曾子曰く、吾れ日に吾が身を三省す。
人の為に謀りて忠ならざるか。
朋友と交わりて信ならざるか。
習はざるを伝へしか、と。

そう言えば、王陽明先生の「伝習録」の伝習もここからとられていますね。

自分の良い面を信じて、振り返らずにとにかく進む。ということばかりでしたが、自分の良くない性質や、人のためにならない行動など「省みる」ということの大切さを少しづつ知ったからこそ、禅にも改めて興味が出てきたのかもしれません。

先哲の教訓は偉大なものばかり。
日々、頭の下がる思いです。


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